2016/02/13
第三章『L-エル-』という物語が出来上がるまで。そして、伝えたかったこと
Acid Black Cherry がこれまでにリリースしてきたオリジナルアルバムには、すべて“物語”が存在する。
幼い頃、漫画家を夢見たことがあるというyasuにとっては、いろいろと想像を膨らまさせられる“物語”の存在は、とても大きなものなのだろう。
今回、yasuがアルバム『L-エル-』を作るにあたって立てたコンセプトは【愛】だった。
そして、yasuは、その【愛】をより深く伝えていくために、一人の少女を主人公とした物語を作っていくことになったのだ。
少女の名前はエル。波乱の人生を送った一人の女性エルを主人公に描かれた物語が生まれることとなったきっかけは何だったのか? いったいどのような流れの中でエルの波乱の人生が描かれていくことになったのだろうか?
第三章では、アルバムを紐解く『L-エル-』という物語が作られていった過程に迫っていこうと思う。
*
——yasuくんはいつも、楽曲ありきで、後からストーリーを繋げていくという制作方法でコンセプトアルバムを作っているという話だけど、今回の『L-エル-』のストーリーが生まれていったきっかけは?
「最初に「L-エル-」っていう曲があって。その曲を作ったときに、自分の中で、“こんな感じで【愛】を伝えられたらいいなぁ”みたいな、なんとなくなイメージがあって。もちろん、その時点ではしっかりしたお話は頭の中にもなかったけど、なんとなくというかね。実際に、アルバム制作に入る前にプロデューサーと話したら、俺が思っていたというか、なんとなく考えてたことと、同じ感じのことをプロデューサーも考えていたってのもあって、それでいこうって話になって」
——yasuくんもプロデューサーも、昔、漫画家を目指したことがあったから、物語を創り出していくのが好きなんだろうし、根っからのストーリーテラーなんだろうね。
「お話を作るの好きやからね。自分も楽しみながらストーリーを考えられてるから、そこはほんまに楽しいなって思えてる」
——yasuくんは、ストーリーテラーとなって物語を考えるとき、どんなところから描き始めるの?
「そのときどきによって違うけど、プロデューサーとやりとりしながら、そこでよりハッキリと物語が定まっていくというか」
——今回も同じ流れ?
「そう。プロデューサーと、あーじゃない、こーじゃないって話しながら作っていったんやけど、2人の会話は結構な勢いでアウトやで(笑)。かなりイッチャッてる(笑)」
——あははは。楽しそうだね(笑)。
「そうそう(笑)。今回もストーリーを考えてるときのやりとりは、かなり痛い(笑)。“いや、エルはそんなこと言わへん!”とかっていう会話が普通に飛び交ってたからね(笑)」
——物語を読んでる途中で、“yasuくんとプロデューサーは、ここでどんな会話をしながら、この物語を煮詰めていったんだろう……”って思うシーンもあったよ(笑)。
「あははは。そうね、ほんまに、そこを想像されるとかなり痛いよ、ほんまに(笑)」
——まぁ、物語をまだ読んでくれていない人は、是非読んでもらえたらと思うけど、エルとお医者さんとの禁断の愛の下りは、“おいおい、いきなり官能小説かよ!?”と思ったっていう(笑)。
「あははは。あそこね(笑)。」
——ストーリーとしては、エルという一人の少女が主人公となる物語だけど。
「そう。ジャケットにもなってる、エルちゃんという一人の女の子の波乱の人生を綴ったコンセプトストーリーになってますね。みんなそうやと思うけど、生きてたらいろんなことが起るでしょ? 人間誰でも生きてたら絶対に誰もが転機ってあると思うのね。エルちゃんの生涯を俯瞰で見てもらって、それを自分の人生と照らし合わせてもらったら、すごく共感してもらえるんじゃないかな」
——物語は本当に展開が激しいというか、こんなにもエルに不幸が訪れるとは……っていうね。読み手はいろんなところにいろんな感情を重ねて、いろんな感想を持つと思うし、どこをどう受け取るかって、読み手の感性でもあると思うけど。
「そうね、エルちゃんの人生はかなり波乱な人生やけどね。人生ってそんなもんやったりするよね。何をやっても上手くいかないときは上手くいなかいとか、嫌なことが続くときとか、“なんで?”って思っちゃうよね。形や起こることや、感じ方はそれぞれやと思うけど、共感する部分はあるじゃないかな」
——たしかに。“もうこれがきっと最後の恋になるだろうな…”って思っても、いろんなことが起こる。それが人生というものというかね。
「そうね。ほんまに何が起こるか分からへんからね、人生って。エルはね、ぱっと見、恋多き女性に見えると思うんやけど、その都度その都度、ただただ真剣に恋をしてたっていうところを分かってあげてもらえると嬉しいかな。そんなエルちゃんの姿を、みんなが愛してくれたらいいなぁと思ってるかな」
——そうだね。欲しかったのは愛っていうね。
「そうやね」
——yasuくん的に、この物語で1番好きな場面はどこ?
「俺はね、どのシーンも結構好きなんやけど、クライマックスかな。お話の最後が、夢なのか現実なのか解らない、フワッとさせてあるんやけど、そこが気に入ってるかな。オヴェスは実際に7色の花で絵を描いていたんやけど、それを実際にエルが見たかどうか……っていうところはね、読み手の想像に任せる描き方になってるから。僕としては、そんな最後のシーンにジーンときちゃうっていう」
——うんうん。そこはジーンとしちゃうね。また、アルバムのラストを飾る「& you」を聴きながらそのシーンを読むと泣ける。
「そうね。プロデューサーが、「& you」は、エンドロールのときに流れる曲になったらいいねって言って、すごく昔に作った曲を引っ張り出してきたんだけど、まさに、聴いたみんながそう思ってくれた1曲になったからね。それはすごく嬉しく思いましたね」
——すごく大切なことを教えてくれたストーリーであり、アルバムでもあったなって思う。
「そうだね。【どれだけのことをしてもらったか、ではなく、どれだけのことをしてあげたか】が人間の価値というかね。そういう生き方が素敵だなっていう。そんなところが、音と一緒に伝わってくれたら嬉しいなと思いますね」
——【どれだけのことをしてもらったか、ではなく、どれだけのことをしてあげたか】素敵な言葉だね。
「そうね、なかなかそんなふうに思えないからね。そう思えたら素敵やなって思いますね」
——今回の物語は、アルバムがリリースされた後に、小説としてまとめられて1冊の本になって発売されているけど。
「そうね。小説では、少し加筆もあるし、より深く物語りが描かれていたりもするから、もう一度読み返して、そして、アルバムをじっくりと聴き返してもらったら、また違った聴こえ方になるかもしれないし、小説から『L-エル-』というアルバムを知ってもらえるのも、嬉しいなって思いますね。自分で言うのもなんやけど、すごく良く出来たストーリーになったなと思ってます! 面白いんじゃないかな。そこはね、自負してる。でも、今回もね、コンセプトストーリーをどうしても読んで欲しい! っていうところではないし、純粋な音楽アルバムとしても楽しめるように作っているけど、興味を持ってくれた人達がアルバムを聴いてくれたときに、もう一歩深い世界がそこに広がっていたら素敵やなと。興味を持ってくれた人に、素敵な世界を用意して待っておく、みたいな感覚かなって思うからね」
Writer 武市尚子
【『L-エル-』の奇跡と共にあった1年・第四章『L-エル-』ライブハウスツアー】へ続く
幼い頃、漫画家を夢見たことがあるというyasuにとっては、いろいろと想像を膨らまさせられる“物語”の存在は、とても大きなものなのだろう。
今回、yasuがアルバム『L-エル-』を作るにあたって立てたコンセプトは【愛】だった。
そして、yasuは、その【愛】をより深く伝えていくために、一人の少女を主人公とした物語を作っていくことになったのだ。
少女の名前はエル。波乱の人生を送った一人の女性エルを主人公に描かれた物語が生まれることとなったきっかけは何だったのか? いったいどのような流れの中でエルの波乱の人生が描かれていくことになったのだろうか?
第三章では、アルバムを紐解く『L-エル-』という物語が作られていった過程に迫っていこうと思う。
*
——yasuくんはいつも、楽曲ありきで、後からストーリーを繋げていくという制作方法でコンセプトアルバムを作っているという話だけど、今回の『L-エル-』のストーリーが生まれていったきっかけは?
「最初に「L-エル-」っていう曲があって。その曲を作ったときに、自分の中で、“こんな感じで【愛】を伝えられたらいいなぁ”みたいな、なんとなくなイメージがあって。もちろん、その時点ではしっかりしたお話は頭の中にもなかったけど、なんとなくというかね。実際に、アルバム制作に入る前にプロデューサーと話したら、俺が思っていたというか、なんとなく考えてたことと、同じ感じのことをプロデューサーも考えていたってのもあって、それでいこうって話になって」
——yasuくんもプロデューサーも、昔、漫画家を目指したことがあったから、物語を創り出していくのが好きなんだろうし、根っからのストーリーテラーなんだろうね。
「お話を作るの好きやからね。自分も楽しみながらストーリーを考えられてるから、そこはほんまに楽しいなって思えてる」
——yasuくんは、ストーリーテラーとなって物語を考えるとき、どんなところから描き始めるの?
「そのときどきによって違うけど、プロデューサーとやりとりしながら、そこでよりハッキリと物語が定まっていくというか」
——今回も同じ流れ?
「そう。プロデューサーと、あーじゃない、こーじゃないって話しながら作っていったんやけど、2人の会話は結構な勢いでアウトやで(笑)。かなりイッチャッてる(笑)」
——あははは。楽しそうだね(笑)。
「そうそう(笑)。今回もストーリーを考えてるときのやりとりは、かなり痛い(笑)。“いや、エルはそんなこと言わへん!”とかっていう会話が普通に飛び交ってたからね(笑)」
——物語を読んでる途中で、“yasuくんとプロデューサーは、ここでどんな会話をしながら、この物語を煮詰めていったんだろう……”って思うシーンもあったよ(笑)。
「あははは。そうね、ほんまに、そこを想像されるとかなり痛いよ、ほんまに(笑)」
——まぁ、物語をまだ読んでくれていない人は、是非読んでもらえたらと思うけど、エルとお医者さんとの禁断の愛の下りは、“おいおい、いきなり官能小説かよ!?”と思ったっていう(笑)。
「あははは。あそこね(笑)。」
——ストーリーとしては、エルという一人の少女が主人公となる物語だけど。
「そう。ジャケットにもなってる、エルちゃんという一人の女の子の波乱の人生を綴ったコンセプトストーリーになってますね。みんなそうやと思うけど、生きてたらいろんなことが起るでしょ? 人間誰でも生きてたら絶対に誰もが転機ってあると思うのね。エルちゃんの生涯を俯瞰で見てもらって、それを自分の人生と照らし合わせてもらったら、すごく共感してもらえるんじゃないかな」
——物語は本当に展開が激しいというか、こんなにもエルに不幸が訪れるとは……っていうね。読み手はいろんなところにいろんな感情を重ねて、いろんな感想を持つと思うし、どこをどう受け取るかって、読み手の感性でもあると思うけど。
「そうね、エルちゃんの人生はかなり波乱な人生やけどね。人生ってそんなもんやったりするよね。何をやっても上手くいかないときは上手くいなかいとか、嫌なことが続くときとか、“なんで?”って思っちゃうよね。形や起こることや、感じ方はそれぞれやと思うけど、共感する部分はあるじゃないかな」
——たしかに。“もうこれがきっと最後の恋になるだろうな…”って思っても、いろんなことが起こる。それが人生というものというかね。
「そうね。ほんまに何が起こるか分からへんからね、人生って。エルはね、ぱっと見、恋多き女性に見えると思うんやけど、その都度その都度、ただただ真剣に恋をしてたっていうところを分かってあげてもらえると嬉しいかな。そんなエルちゃんの姿を、みんなが愛してくれたらいいなぁと思ってるかな」
——そうだね。欲しかったのは愛っていうね。
「そうやね」
——yasuくん的に、この物語で1番好きな場面はどこ?
「俺はね、どのシーンも結構好きなんやけど、クライマックスかな。お話の最後が、夢なのか現実なのか解らない、フワッとさせてあるんやけど、そこが気に入ってるかな。オヴェスは実際に7色の花で絵を描いていたんやけど、それを実際にエルが見たかどうか……っていうところはね、読み手の想像に任せる描き方になってるから。僕としては、そんな最後のシーンにジーンときちゃうっていう」
——うんうん。そこはジーンとしちゃうね。また、アルバムのラストを飾る「& you」を聴きながらそのシーンを読むと泣ける。
「そうね。プロデューサーが、「& you」は、エンドロールのときに流れる曲になったらいいねって言って、すごく昔に作った曲を引っ張り出してきたんだけど、まさに、聴いたみんながそう思ってくれた1曲になったからね。それはすごく嬉しく思いましたね」
——すごく大切なことを教えてくれたストーリーであり、アルバムでもあったなって思う。
「そうだね。【どれだけのことをしてもらったか、ではなく、どれだけのことをしてあげたか】が人間の価値というかね。そういう生き方が素敵だなっていう。そんなところが、音と一緒に伝わってくれたら嬉しいなと思いますね」
——【どれだけのことをしてもらったか、ではなく、どれだけのことをしてあげたか】素敵な言葉だね。
「そうね、なかなかそんなふうに思えないからね。そう思えたら素敵やなって思いますね」
——今回の物語は、アルバムがリリースされた後に、小説としてまとめられて1冊の本になって発売されているけど。
「そうね。小説では、少し加筆もあるし、より深く物語りが描かれていたりもするから、もう一度読み返して、そして、アルバムをじっくりと聴き返してもらったら、また違った聴こえ方になるかもしれないし、小説から『L-エル-』というアルバムを知ってもらえるのも、嬉しいなって思いますね。自分で言うのもなんやけど、すごく良く出来たストーリーになったなと思ってます! 面白いんじゃないかな。そこはね、自負してる。でも、今回もね、コンセプトストーリーをどうしても読んで欲しい! っていうところではないし、純粋な音楽アルバムとしても楽しめるように作っているけど、興味を持ってくれた人達がアルバムを聴いてくれたときに、もう一歩深い世界がそこに広がっていたら素敵やなと。興味を持ってくれた人に、素敵な世界を用意して待っておく、みたいな感覚かなって思うからね」
Writer 武市尚子
【『L-エル-』の奇跡と共にあった1年・第四章『L-エル-』ライブハウスツアー】へ続く