2月17日リリースのDVD＆Blu-ray『Acid Black Cherry 2015 livehouse tour S—エス—』。ここに収録されている本編は、8ヶ所13公演の全国アリーナツアー『Acid Black Cherry 2015 arena tour Ｌ―エルー』と平行して行なわれていたファンクラブ限定ライヴハウスツアーの東京・原宿アストロホールでのライヴ映像である。

Acid Black Cherryがライヴハウスでツアーを行なうのは、2008年に１stアルバム『BLACK LIST』を引っさげて行なった『Acid Black Cherry 2008 tour “BLACK LIST” livehouse tour』以来と、実に８年ぶりのこと。始動初のツアーがライヴハウスでのシークレットツアーであったAcid Black Cherryにとっては、まさにライヴハウスは原点。そして、バンドとして地元のライヴハウスから叩き上がってきたyasuにとっても、ライヴハウスは、自身がアーティストとしてステージに立つことになった最初の場所というわけだ。

故に、yasuというアーティストの真髄が浮き彫りになる場所でもあるのだ。広い会場で唄うもライヴハウスで唄うも、yasuの熱量は変わりはないのだが、ライヴハウスは誤摩化しのきかない場所であるが故、yasuのアーティストとしてのすべてが赤裸々に露呈される場ともなる。まさに。この映像からは、丸腰で挑む紛れもないyasuの実力と、人間力をダイレクトに感じることが出来ると言ってもいい。圧巻の歌唱力。バンドのボーカリストとしての魅せ方。飾らないMC。余計な力の入っていない、あるがままのライヴパフォーマンス。そのすべては、yasuという人間の生き様そのものであると言っても過言ではない。

自身初となるアリーナツアーと対照的とも言える場所でのSツアーは、yasu本人の発案であったという。このライヴハウスツアーには、yasuが常からよく口にしている“どんなに大掛かりで素晴しい特効よりも、どれだけ自分が近くに行けるか1番の特効であり演出だと思う”という、聴き手側の気持ちに寄り添ったyasuの優しさでもあったが、現状に満足することなく、決して驕ることの無いyasuの自らへの挑戦。“今、ここに来ての敢えての原点回帰”であるように思う。

今作には、福岡、東京、大阪、名古屋、札幌という全国５ヶ所5公演で行なわれたライヴハウスツアー全箇所のダイジェスト映像も収録されており、会場入りやステージへと向かうまでの光景など、普段は見ることが出来ないリアルなyasuの姿が映し出されているのも魅力だ。

さらには、昨年の夏に行なわれた大阪でのa-nationのライヴも収録されていることから、様々な角度からAcid Black Cherryのライヴを楽しむことができる。

Writer 武市尚子