1月27日にリリースされたライヴアルバム『Acid Black Cherry 2015 arena tour L－エル－』は、2015年2月に発売された自身4枚目の
アルバム「L－エル－」を引っさげてスタートし、ホールツアーとアリーナツアーで合計18万人を動員した『2015 tour L－エル－』の、
横浜アリーナ公演を収録したライヴアルバムである。

今作には、アルバム『L－エル－』の主人公であった“エル”の唄声から幕を開けたライヴがそのまま収録されていることもあり、
アルバム以上に情景をはっきりと聴き手に届けるモノとなっている。

実際のライヴでは、映画のシーンが断片的に流される様な構成になっていたことから視覚が刺激され、“ライヴのみの激しさ”に、
情緒が加わった奥行きのある新しいライヴの形を生み出していたのだが、映像込みでライヴのインターバルとして届けられていた音を、
ライヴアルバムの中で音のみで受け取ると、その音とその流れは、映画のストーリーを伺わせるサウンドトラックと化すのである。

エルの歌声は、yasuの唄う「Loves」へと繋がれていき、ライヴ仕様にアレンジされたイントロを宿した「versus G」が激しくライヴの本編へと誘っていく。エルが身を投じていくことになる波乱の人生を物語るかのように、ヘヴィなナンバーが畳み掛けられていくかのように置かれた楽曲の流れも聴き所だ。

本編に突入した後は、いつものAcid Black Cherryらしい、激しさが前面に押出された“生っぽいライヴ感”を楽しむことが出来るのも、
ライヴアルバムならではの魅力と言えるだろう。

オープニングに用いられていたエルが口ずさむ「Loves」や、中盤やアンコールの冒頭に差し込まれる「scene〜悪魔から救う手〜」や「scene ～夢から醒めて～」などのインタールードは、オリジナルアルバムには収録されていないため、
純粋なロック・アルバムとして楽しめたオリジナルアルバムの『L－エル－』とは、まったく異なる楽しみ方が出来る１枚である。

Writer 武市尚子