2016/02/06
第二章『『L-エル-』の誕生=『L-エル-』が作られていった過程』
yasuは常に、オリジナルアルバムを制作する時、そこに1つのコンセプトを立てる。
しかし。yasuの場合、そのコンセプトを軸にしながらも、そこを元にしたストーリーに対して楽曲を当て嵌めていくのではなく、あくまでも楽曲ありきでアルバム制作を進めていきながら、そこにストーリーを当て嵌めていくのである。
今作『L-エル-』も流れは同じ。【愛】という大きなコンセプトをアルバムの軸として定めたyasuは、アルバムの背骨となる10曲ほどの楽曲を、まず最初に作ったのだと言う。
第二章では、アルバム『L-エル-』が作られていった過程に迫っていこうと思う。
——『L-エル-』の作り方としては、最初に楽曲があって、その後でストーリーを絡めていった感じだったと思うけど、具体的な流れとしては?
「まず、何曲か入ってるデモテープをプロデューサーに投げて、(デモに入ってた仮歌詞をベースに)お話の叩きみたいなのが出来て、そこからプロデューサーとやいやい言いながら形にしていったから、夏、いや、秋くらいやったんちゃうかな、2014年の。それくらいの時期やったと思うよ、ちゃんとだいぶ固まって、そこに向かって走れってなったのは」
——なるほどね。
「うん。そうやったと思う。具体的な流れとしてはね」
——じゃぁ2015年になってからは、実質、最終的な制作作業もあったけど、あとはライヴに向かって突っ走っていこうって感じだった?
「そうね。音源的には、年明けてからはミックスだけだったような気がすんねんけど。映像とかもろもろ編集も残ってたし、やることはいっぱいあったんやけどね」
——お正月返上して作業してたって言ってたような。
「あ、そうそう。正月まるまる使って、最終的なミックスしたんや。そうやったね。そうそう。そうやったそうやった」
——働いてるねぇ、yasuくん(笑)。
「ね、ほんまや。なんか俺、めっちゃ働いてるやん(笑)」
——あははは。お疲れ様。
「いやいや(笑)。あ、そうやそうや。ほんで、延期が決まったのが1月中旬くらいやったもん。ホント、喉元過ぎたらそのときの熱さの記憶ってちょっと緩和されるんやね(笑)。そんときはめっちゃしんどかったのに、こうして話すまでは、はっきりとした記憶じゃなくなってたわ(笑)」
——あははは。人間のしくみだね。よく出来てるね、人間って(笑)。じゃないと生きていけないんだろうね。でも、そんな頑張りのかいあって、『L-エル-』も見事、オリコンチャートデイリーは1位、ウィークリーでも2位を獲得して。
「そうね、おかげさまで。ほんまに買って聴いてくれたみんなのおかげやなって思いますね」
——いつも“たくさんの人が、長く聴いてくれるのが1番嬉しい”ってよく言ってるもんね。
「そう。俺的に順位はあんまり関係ないんやけど、ただ、1位とかになったり順位が上がると、一緒に頑張って作ってくれたスタッフや周りの人が喜ぶからね。それは嬉しいかな。」
——って、「『2012』」の時も言ってたね。
「うん。ほんまにそう思うからね」
——そもそも、このアルバムの曲たちがデモとして出来ていたのは、いつくらいの話だったの?
「デモを作ったのはね、だいたいProject『Shangri-la』の前あたり。その時に10曲くらいあって、それが『L-エル-』のベースになってった感じやったね。今回作った曲でアルバムを作るんだったら、だいたいこんな感じかな、っていうのをプロデューサーに持ってったんが最初やったね。「liar or LIAR ?」「エストエム」「Round & Round」「L-エル-」とかあたりは、ほんまに最初の方からあったね」
——最初の10曲の中に、既に「L-エル-」もあったんだもんね。
「うん。「L-エル-」もあったよ」
——って言ってたよね。
「そう。でも、もうその時点では「L-エル-」の歌詞はあったからね。最初から、歌詞は“エル、おはよ~”やったからね」
——そこが不思議。その時にはまだストーリーが完全に出来上がっていたわけではなかったのに。
「そうね。でも、エルのLはLOVEのLやからね」
——なるほど。そこはまさに、このアルバムのコンセプトでもある【愛】なわけだね。
「そうそう」
——最初に聴いた時、あまりにもストーリーに沿ったモノだったから、この曲はいつもの作り方とは違って、ストーリーありきで作られた楽曲だと思ったからね。
「そうね、サントラ的な作り方をしたのか? って思うかもね。まぁ、たしかに、「L-エル-」は、ロック・アルバムというイメージとはかけ離れた楽曲でもあるから、この曲だけ切り取って聴いたらびっくりするというか、ストーリーありきで作られた曲かって思うかもね」
——でも、実際の流れとして、「L-エル-」はストーリーのプロットもまだ無い状態のところから生まれた曲だったんでしょ?
「うん、そう。むしろ、「L-エル-」が、このアルバムを作る上で1番最初にあった曲やからね」
——yasuくん前に、自分的に“自分(Acid Black Cherry)らしい曲”って思う曲は、「少女の祈り」とか「in the Mirror」かな~って言ってたことあったけど、「L-エル-」はまたそことは違うベクトルの曲だもんね。yasuくんが「L-エル-」を作ったきっかけというか、どんな景色を描きたくて作った楽曲だったの?
「「L-エル-」を作ったきっかけはね、チャレンジかな」
——チャレンジ?
「そう。3拍子の曲作ってみようっていう自分の中のチャレンジ精神みたいなんやったというかね。3拍子の曲って難しいし、やるんやったら、絶対に刺さなアカンっていうか。それだけの覚悟がないと出来へん曲やと思ってるから。「7 colors」を作ったのも同じ理由。「7 colors」みたいなリズムも禁断のリズムやったからね。今まで自分の中でNGにしてきたリズムでもあったから、そこを解禁してみよかなっていう気持ちやった」
——アルバムには3拍子の曲が「L-エル-」以外にもう1曲あるよね。
「うん。「Loves」ね。逆に、「Loves」は、このアルバムの中で1番最後に出来た曲やってん。この曲だけはね、唯一、ストーリーが全部出来上がってから、物語に沿って作った曲やってん。「Loves」だけは、唯一物語ありきで作った曲やったね」
——それって珍しいことだよね。
「そうそう。この物語が無かったら生まれていなかった曲。「Loves」を作ったのは、だいたいアルバムの曲が出揃って、曲を並べながらそこに物語を当て嵌めていきながら、ほぼ完成に近づいた頃、プロデューサーに、“このお話のシーンに合う曲があるといいと思うんだよね~”って、最後の最後に言われて作った曲やってん」
——そんなにもギリギリな段階で?
「そう。もうね、正直、えぇ~ってなってん(笑)。マジで言うてんの!? って」
——最初から「Loves」も3拍子にしようと思ってたの?
「「Loves」は、「L-エル-」の派生版みたいな曲にしようと思ったから3拍子やねん。最初は、1曲じゃなくて、「L-エル-」のフレーズを使って、男女が唄(→歌)を重ねるようなフレーズだけでもありなんじゃないか? って話もしてたんやけどね。でも、やっぱりちゃんと新たな1曲として作った方がいいなと思って。コンセプトアルバムらしく、「L-エル-」に手触りが近いモノにしようって作った楽曲やったね」
——そこだけはいつもとちょっと流れが違っていたんだね。
「そうやね、そこはほんまに珍しかったね」
——しかし、アルバムのラストを飾っている「& you」は、「Loves」で終わったお話の最後が、7色の花で埋め尽くされたLa vie en roseの街をバックに、エンドロールと共に流れるっていうイメージというか、まさにそのために作られたみたいな曲だけど、すごく昔に作った曲でもあるんでしょ?
「そうそう。「& you」は6年前に作った曲やからね。6年前にこの曲を作ったときは、今回のお話なんて無かったし、このアルバムの構想の欠片すら無かったからね。そこにこのピースがハマることが必然だったみたいになってるのがすごいことだよね。今回は、長いお話があるけど、お話が無くても、アルバムとしては、純粋に1枚のロック・アルバムとして聴いてもらえると思うので、音楽だけで楽しんでもらえるのも嬉しいなと思いますね。いろいろな挑戦もあった1枚になったと思うので、是非是非、じっくり聴いてみてほしいですね」
Writer 武市尚子
【『L-エル-』の奇跡と共にあった1年・第三章『『L-エル-』という物語が出来上がるまで。そして、伝えたかったこと』】へ続く
しかし。yasuの場合、そのコンセプトを軸にしながらも、そこを元にしたストーリーに対して楽曲を当て嵌めていくのではなく、あくまでも楽曲ありきでアルバム制作を進めていきながら、そこにストーリーを当て嵌めていくのである。
今作『L-エル-』も流れは同じ。【愛】という大きなコンセプトをアルバムの軸として定めたyasuは、アルバムの背骨となる10曲ほどの楽曲を、まず最初に作ったのだと言う。
第二章では、アルバム『L-エル-』が作られていった過程に迫っていこうと思う。
——『L-エル-』の作り方としては、最初に楽曲があって、その後でストーリーを絡めていった感じだったと思うけど、具体的な流れとしては?
「まず、何曲か入ってるデモテープをプロデューサーに投げて、(デモに入ってた仮歌詞をベースに)お話の叩きみたいなのが出来て、そこからプロデューサーとやいやい言いながら形にしていったから、夏、いや、秋くらいやったんちゃうかな、2014年の。それくらいの時期やったと思うよ、ちゃんとだいぶ固まって、そこに向かって走れってなったのは」
——なるほどね。
「うん。そうやったと思う。具体的な流れとしてはね」
——じゃぁ2015年になってからは、実質、最終的な制作作業もあったけど、あとはライヴに向かって突っ走っていこうって感じだった?
「そうね。音源的には、年明けてからはミックスだけだったような気がすんねんけど。映像とかもろもろ編集も残ってたし、やることはいっぱいあったんやけどね」
——お正月返上して作業してたって言ってたような。
「あ、そうそう。正月まるまる使って、最終的なミックスしたんや。そうやったね。そうそう。そうやったそうやった」
——働いてるねぇ、yasuくん(笑)。
「ね、ほんまや。なんか俺、めっちゃ働いてるやん(笑)」
——あははは。お疲れ様。
「いやいや(笑)。あ、そうやそうや。ほんで、延期が決まったのが1月中旬くらいやったもん。ホント、喉元過ぎたらそのときの熱さの記憶ってちょっと緩和されるんやね(笑)。そんときはめっちゃしんどかったのに、こうして話すまでは、はっきりとした記憶じゃなくなってたわ(笑)」
——あははは。人間のしくみだね。よく出来てるね、人間って(笑)。じゃないと生きていけないんだろうね。でも、そんな頑張りのかいあって、『L-エル-』も見事、オリコンチャートデイリーは1位、ウィークリーでも2位を獲得して。
「そうね、おかげさまで。ほんまに買って聴いてくれたみんなのおかげやなって思いますね」
——いつも“たくさんの人が、長く聴いてくれるのが1番嬉しい”ってよく言ってるもんね。
「そう。俺的に順位はあんまり関係ないんやけど、ただ、1位とかになったり順位が上がると、一緒に頑張って作ってくれたスタッフや周りの人が喜ぶからね。それは嬉しいかな。」
——って、「『2012』」の時も言ってたね。
「うん。ほんまにそう思うからね」
——そもそも、このアルバムの曲たちがデモとして出来ていたのは、いつくらいの話だったの?
「デモを作ったのはね、だいたいProject『Shangri-la』の前あたり。その時に10曲くらいあって、それが『L-エル-』のベースになってった感じやったね。今回作った曲でアルバムを作るんだったら、だいたいこんな感じかな、っていうのをプロデューサーに持ってったんが最初やったね。「liar or LIAR ?」「エストエム」「Round & Round」「L-エル-」とかあたりは、ほんまに最初の方からあったね」
——最初の10曲の中に、既に「L-エル-」もあったんだもんね。
「うん。「L-エル-」もあったよ」
——って言ってたよね。
「そう。でも、もうその時点では「L-エル-」の歌詞はあったからね。最初から、歌詞は“エル、おはよ~”やったからね」
——そこが不思議。その時にはまだストーリーが完全に出来上がっていたわけではなかったのに。
「そうね。でも、エルのLはLOVEのLやからね」
——なるほど。そこはまさに、このアルバムのコンセプトでもある【愛】なわけだね。
「そうそう」
——最初に聴いた時、あまりにもストーリーに沿ったモノだったから、この曲はいつもの作り方とは違って、ストーリーありきで作られた楽曲だと思ったからね。
「そうね、サントラ的な作り方をしたのか? って思うかもね。まぁ、たしかに、「L-エル-」は、ロック・アルバムというイメージとはかけ離れた楽曲でもあるから、この曲だけ切り取って聴いたらびっくりするというか、ストーリーありきで作られた曲かって思うかもね」
——でも、実際の流れとして、「L-エル-」はストーリーのプロットもまだ無い状態のところから生まれた曲だったんでしょ?
「うん、そう。むしろ、「L-エル-」が、このアルバムを作る上で1番最初にあった曲やからね」
——yasuくん前に、自分的に“自分(Acid Black Cherry)らしい曲”って思う曲は、「少女の祈り」とか「in the Mirror」かな~って言ってたことあったけど、「L-エル-」はまたそことは違うベクトルの曲だもんね。yasuくんが「L-エル-」を作ったきっかけというか、どんな景色を描きたくて作った楽曲だったの?
「「L-エル-」を作ったきっかけはね、チャレンジかな」
——チャレンジ?
「そう。3拍子の曲作ってみようっていう自分の中のチャレンジ精神みたいなんやったというかね。3拍子の曲って難しいし、やるんやったら、絶対に刺さなアカンっていうか。それだけの覚悟がないと出来へん曲やと思ってるから。「7 colors」を作ったのも同じ理由。「7 colors」みたいなリズムも禁断のリズムやったからね。今まで自分の中でNGにしてきたリズムでもあったから、そこを解禁してみよかなっていう気持ちやった」
——アルバムには3拍子の曲が「L-エル-」以外にもう1曲あるよね。
「うん。「Loves」ね。逆に、「Loves」は、このアルバムの中で1番最後に出来た曲やってん。この曲だけはね、唯一、ストーリーが全部出来上がってから、物語に沿って作った曲やってん。「Loves」だけは、唯一物語ありきで作った曲やったね」
——それって珍しいことだよね。
「そうそう。この物語が無かったら生まれていなかった曲。「Loves」を作ったのは、だいたいアルバムの曲が出揃って、曲を並べながらそこに物語を当て嵌めていきながら、ほぼ完成に近づいた頃、プロデューサーに、“このお話のシーンに合う曲があるといいと思うんだよね~”って、最後の最後に言われて作った曲やってん」
——そんなにもギリギリな段階で?
「そう。もうね、正直、えぇ~ってなってん(笑)。マジで言うてんの!? って」
——最初から「Loves」も3拍子にしようと思ってたの?
「「Loves」は、「L-エル-」の派生版みたいな曲にしようと思ったから3拍子やねん。最初は、1曲じゃなくて、「L-エル-」のフレーズを使って、男女が唄(→歌)を重ねるようなフレーズだけでもありなんじゃないか? って話もしてたんやけどね。でも、やっぱりちゃんと新たな1曲として作った方がいいなと思って。コンセプトアルバムらしく、「L-エル-」に手触りが近いモノにしようって作った楽曲やったね」
——そこだけはいつもとちょっと流れが違っていたんだね。
「そうやね、そこはほんまに珍しかったね」
——しかし、アルバムのラストを飾っている「& you」は、「Loves」で終わったお話の最後が、7色の花で埋め尽くされたLa vie en roseの街をバックに、エンドロールと共に流れるっていうイメージというか、まさにそのために作られたみたいな曲だけど、すごく昔に作った曲でもあるんでしょ?
「そうそう。「& you」は6年前に作った曲やからね。6年前にこの曲を作ったときは、今回のお話なんて無かったし、このアルバムの構想の欠片すら無かったからね。そこにこのピースがハマることが必然だったみたいになってるのがすごいことだよね。今回は、長いお話があるけど、お話が無くても、アルバムとしては、純粋に1枚のロック・アルバムとして聴いてもらえると思うので、音楽だけで楽しんでもらえるのも嬉しいなと思いますね。いろいろな挑戦もあった1枚になったと思うので、是非是非、じっくり聴いてみてほしいですね」
Writer 武市尚子
【『L-エル-』の奇跡と共にあった1年・第三章『『L-エル-』という物語が出来上がるまで。そして、伝えたかったこと』】へ続く